村上陽一郎さん(東京大学名誉教授 国際基督教大学名誉教授)インタビュー

村上陽一郎さん(東京大学名誉教授 国際基督教大学名誉教授)

「読者との喜びの共有」

解説

病理学者であった父親は、あらゆる書物の原点を、レクラムにおいていた。寝る前の三十分のあいだに、レクラムの『岩窟王』を訳しながら読んでくれたのが、4歳のころ。中学生になり、背丈があったことから、野球の指導をする先生に見いだされピッチャーをやったりもしたが、どうもしっくりこない。その頃から「自分には何が出来るんだろう」と考え始めた。

自宅で開業している父親の背中を見て、「進むべき道なのかな」という漠然とした想いと、チェロをやっていたため芸大にも興味があり、迷っていた。岐路にたっていた時、胸の病気に罹ってしまった。追い討ちをかけるように追いつめられたのは、同年十二月の父親の死。一家は生活に困るようになり、「色々と思い描いていたこと、自分の中にある可能性などが全部消えてしまいました」。

私の根本には、楽観主義がありました。『明日のことは思いわずらうな』という有名なものがあります。「野のユリを見なさい。野のユリは、何を着ようとか、何を食べようとかいうことは、一切思わずに、ただ生きているじゃないか。それは神の恵みが、そこに及んでいるからだ」と。ギリギリのところで、そういった思いがあったのかもしれません。

支えたのは、聖書の言葉だけではない。科学史・科学哲学が専門の大森荘蔵先生との出会いが、みずからも、そうした道に進ませてくれるきっかけになった。学問領域がちょうど文系と理系との半々のところに位置するため、理系から完全に離れる意識のなかった先生にとって、どちらも行き来できる魅力的なものだった。そうして文理を行き来することで見えてくる魅力を、数々の著作に記してきた。

プロフィール

1936年、東京都生まれ。東京大学人文系大学院博士課程修了。東京大学教養学部、同先端科学技術研究センター、国際基督教大学などの教授を経て、2014年3月まで東洋英和女学院大学学長。専門は科学史・科学哲学。 『エリートたちの読書会』(毎日新聞社)、『私のお気に入り─観る・聴く・探す』(集英社)、『知るを学ぶ あらためて学問のすすめ』(河出書房新社)など、著書多数。

インタビュー

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